4. お家芸
研究室間の交流を深めるという名の飲み会が模様されるとの連絡が回ってきた。
その日は日程を詰め、出来るだけ参加するようにと言われた。
あまりない外との交流ということもあって私も参加することにした。
当日、さすがに1日の仕事を圧縮するのも限界があり、少々遅れ参加した。
すると"ヤツ"はwelcome drinkと称して酒が入った紙コップを持ってきた。
匂うと明らかに高濃度な酒の匂いがする。
勧められるがままに飲もうとするが、口をつけた時点でムリだと感じた。
それを見た"ヤツ"は「これが飲めないヤツは指導はしない。だから卒業もできない」。
割りと真顔でそう言っていた。
意を決して飲む。
喉が痛い。息をすると肺が焼けそうになる。
後で聞いた話では"ヤツ"が飲ませていたのは実験用に試薬で、
かなり高濃度なアルコールが含まれるものだったらしい。
もちろん飲むと人体に影響が出る可能性は高い。
「これ飲めないヤツは破門だから。飲めてよかった。」
そう笑顔で言われたが、こっちは愛想笑いで精一杯。
その後"ヤツ"が何人に同じことをしたかは知らない。